大塚英志『ストーリーメーカー』を読んだ

さまざまな神話をある程度以上抽象化すると同じ構造が大量に出てくる。その構造を創作に応用して物語を作ってみよう!という本。同著者の『キャラクターメーカー』『物語の体操』の続編に位置付けられた本みたい。

2部構成になっていて、前半は物語論の先人が発見・分類した物語の構造を教えてくれる。物語の最も基本的な構造は、「欠落と回復」と「行って帰る」の2点で、あとはそれのバリエーションになる。特に瀬田貞二『幼い子の文学』プロップ『昔話の形態学』、ランク『英雄誕生の神話』、キャンベル『千の顔を持つ英雄』ホグラー『神話の法則』について一章ずつ割かれている。後半は実作編で、30個の課題を順番に解いていくと、前半で紹介したこれらの構造に当てはまった物語が出来上がる。

あとがきでこの本を書いた動機を教えてくれる; 事件を起こす若者はよく小説のようなものを書いているが出来がひどい、「私」の内にある生のままの物語をアウトプットしたから一線を越えて事件を起こしてしまうのではないか、物語を整えて物語る技術があればもっと社会と折り合いをつけることもできたのでは、という問題意識がこの本を書いた動機だと言う。

上記の主張は唐突に出てきて面食らったけど、確かにそういう効果はあると思った。私もこの本の通りになんか物語を作ってみようと思い、ぼんやりと考えていた理想の風景を本の通りに加工してみた。美しいと思っていたものがありがちな陳腐な言葉ではっきりしていくという経験ができて、感情的に結構抵抗があったけど面白かった。自分に物語を作るスキルがないというのもあるけど、しょうもないものしかできなくて、「あ、俺の価値観ってこんなもんなんだ」となることができた。物語作成技術を教えてくれる本という体だけど、実は自己啓発書でもあり、そういう使い方もできる。

読んだきっかけは、大学生の頃に文学好きの友人に「小説ってどうやって書くの?」と聞いたら「大塚英志とか読んだら」と教えてくれたので気になっていた。それでこのあいだ読んだ橋本『物語論 基礎と応用』で本書が紹介されてたので読んだ。著者は『多重人格探偵サイコ』の原作者。中学生の頃にルーシー・モノストーンってマジにいるミュージシャンだと思ってたなーと思い出した。

ぼくのように思いつきで主人公の左目にバーコードを入れてしまうと後で辻褄合わせに苦労します。 (『ストーリーメーカー』188ページ)

笑った。

初版の本だったからか誤字脱字が結構あった。