宮本常一『忘れられた日本人』を読んだ

江戸の終わりから第二次大戦後間もなくにかけての農村部に住んでた人からの聞き書き話を大量に教えてくれる。

女好きの色男で今は橋の下に住む人の女性遍歴(「土佐源氏」)とか、面白そうなことがあると村を出ていってしばらくそこで暮らしてみる人とか(「世間師」)、田植えの時はエロ話をし続けたとか(「女の世間」)が本人が語った体に書かれている。民俗学上の評価はほとんど書かれておらず、良い話集として読めるので読みやすい。

民俗学な価値は私にはわからないけど、いい話を聞いたなーってなる。当時としてはどうでもよいありふれた話だったんだろうけど、こうやって文字に残しておくと貴重で価値のあるものになるんだなと思った。著者には消えてしまうものを形として残しておく使命感があるんだろうなとあとがきを読んで思った。

印象に残った話は以下。

  • 寄り合いのやり方。結論を出そうとするんじゃなく、みんなで集まって気の済むまで周辺情報を共有する。数日かけることもある。そうすると全員の合意が自然と形成されるので後で角が立たない。
  • 著者と祖父の亀の思い出話。著者と祖父が亀を捕まえて飼おうとしたけど、急にかわいそうになって逃がしてやった。その亀は長生きして、著者が帰省するたびにそこにいた。
  • 著者の頼みごとを聞き入れるか否かを話し合いに来た周辺の村落の偉い人たちにお礼を渡そうとしても受け取らず、月夜の海に舟を漕いで帰っていく様子。
  • 歌を歌いながら山道を歩くと迷わない。

読んだきっかけは、『もののけ姫』から網野善彦を読もうとして挫折してそのつながりで宮本常一を知った。それでpha『持たない幸福論』を読んでておすすめ書籍に宮本常一の本が出て来たので読んでみようと思ったんだった。ふたつの理由が重なると読んでみようとなるらしい。