魚川祐司『だから仏教は面白い!後編』を読んだ

だから仏教は面白い!後編

だから仏教は面白い!後編

前編に引き続き読んだ。

上座部仏教の「悟り」は、修行を続けていると急に認知の転換が起こり、それのことを指す。もっと抽象的で生きてる間は成し遂げられないものだと思っていたので驚いた。

ブッダがやった悟りと、普通の修行者がやる阿羅漢の悟りがあり、この二つは別物という。ブッダの悟りは他の人も救いまくるみたいな悟りで大乗仏教が志向する悟り、阿羅漢の悟りは個人のもので上座部仏教的悟りだ。

悟った後の認知が転換された出世間の価値は素晴らしくて、普通の世界は苦しいし、お前はそれに気づいてないだけというのはイラつくけど、認知の仕方を改造して気持ちよくなろうというのは刺激的な考え方だと思った。

詳しくは『仏教思想のゼロポイント』を読んでね、とのことなので読んでみようかな。

架神恭介, 至道流星『リアル人生ゲーム完全攻略本』を読んだ

人生を神様が運営しているネットゲームだと見立てて、現代日本社会の状況と人生設計について教えてくれる本。

説明書パートと攻略本パートに分かれている。説明書パートでは幸福点を稼ぐことが人生の目的であることを教えてくれる。攻略本パートでは人生設計する上での前提知識を教えてくれる。前提知識とは、結婚や就職や親の介護などのライフイベントと、金融危機や戦争や地震などの生き方を一変させる可能性のあるビッグイベントの2つだ。

人生をネットゲームと見立てるのは出オチだと思った。攻略本パートの文体がちぐはぐしていると感じた。たまに「プレイヤー」や「日本サーバ」などのゲームっぽい用語が出てくるけど、人生設計において考えるべき出来事とリスクの一般論を真面目に語っているので、文体として中途半端な感じがした。

ブッダがバグを利用して歴代最高得点をマークしたプレイヤーとして書かれているのが面白かった。ちょうど魚川『だから仏教は面白い!』を読んでいたので、労働と生殖を否定しものごとの認知を改造していく仏教の方法はたしかにバグっぽいと思った。

魚川祐司『だから仏教は面白い!前編』を読んだ

だから仏教は面白い!前編

だから仏教は面白い!前編

原始仏教の基本的な考え方について対談形式で教えてくれる。原始仏教とは上座部仏教とかテーラワーダ仏教と呼ばれているものでゴータマ・ブッダが編み出し実践した思想・方法論のことだ。

  • 仏教"「労働」と「生殖」を放棄しろ" (Kindle 位置 363) という考え方を基礎として持っており、現実世界の役に立つことを志向していない。
  • 全てのものごとには原因がありその結果があり、その結果がまた何かの原因になり…の繰り返しで、常に変化している(無常/輪廻)。
  • 思い通りに振る舞える「我」は現実世界に存在しない。原因も結果もなく存在するものはない。(無我)
    • ただし無我は個人の認知機能の束である自己(経験我)を否定するものではない。自己も無常で輪廻して(常に変わり続けて)おり、無我と矛盾するものではない。
  • 無常かつ無我のため、ひとびとは満足した状態になれない(苦)。それをなんとかする方法とはなんだろう。以下後編?

労働と生殖の放棄というのに驚いた。「自然なものが一番」みたいな言説を真っ向から否定する態度だ。反社会的だし生き物としてなかなかやばい考え方だと思った。仏教の始まりは現世利益とは相容れないものだと知った。

輪廻の考え方についてはよくわからなかった。輪廻とはある主体(なんか魂みたいなの)が生まれ変わりをするという意味ではなく、原因と結果の積み重なり続けていること自体のことを指すという。でも、だとしたら解脱をこころみる自己というのはなんなんだろう?と思った。インドでは伝統的に輪廻に対するリアルな感覚があるらしい。

読んだきっかけは、高村『自作の小屋で暮らそう: Bライフの愉しみ』を読み高村氏のブログ記事で本書の著者による別の本が紹介されていたので面白そうだと思ったからで、けど多分読みきれなそうだったので、簡単に読めそうな本書を読んだ。

増田直紀『私たちはどうつながっているのか』を読んだ

複雑ネットワークの基礎の紹介と、その基礎を使って複雑ネットワークの一つである人脈とは何かということを教えてくれる。

基礎とは以下。

  • スモールワールド
  • クラスタ
  • スケールフリー
  • 中心性指標

人と人の繋がり(複雑ネットワーク)において、知り合いの知り合いを訪ねて行くと世界中のどんな人とも意外と近く(スモールワールド性)、自分の知り合いAと別の知り合いBは知り合いである可能性が高く(クラスター性)、繋がりは人によって持っている数が全然違う(スケールフリー性)。また、その人がネットワーク上でどのくらい重要かの指標(中心性指標)がたくさんある。たとえばその人がどれだけ多くの繋がりを持っているか(次数中心)、どのくらい珍しい繋がりを持っているか(媒介中心)など。

数式は一切出て来ず、非常に簡単な日本語で書かれているので読みやすかった。感覚的にはわかっていることが、学として研究されていることを知れてよかった。読んだきっかけは著者のブログ記事を読んで面白かったから。

丸屋九兵衛『ヒップホップの決めゼリフ』を読んだ

アメリカのヒップホップの名フレーズの翻訳と、それのなにがすごいかを解説してくれる。

ヒップホップの人たちがどんなことをラップしてるのかを大まかに知ることができた。体系的にヒップホップを聴いてる人向けで、私はほとんどヒップホップを知らないので解説を読んでもよくわからないことも多かった。

内田樹『寝ながら学べる構造主義』を読んだ

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)

寝ながら学べる構造主義 (文春新書)

構造主義の重要人物の考えたことを教えてくれる。重要人物とは以下。

この本のウリの一つが著者の感想や例え話、主観的な記述が多いことだ。噛み砕いた説明ということらしい。私はそれらの主観的な記述にいちいち引っかかってしまっていたが(「明らかに」、「魔術的な」、「挑発的」、「いささか」などそう言えるだけの根拠があるのかないのか読み戻る)、学校の講義を聞いてる気持ちになって読むと引っかからず読めることに気づいた。カルチャースクールの講義ノートが元ネタだということなので、話し言葉として読むのに適している。

だけど内容は難しくわからなかった。面白そうなことが書いてあるんだけど、目が滑ってすぐわからなくなる。 「ものごとを相対的に見よう」ということしかわからなかった。それとフーコーの権力についての話とレヴィ=ストロースの方法論は面白そうだなと思った。

大学生の時に、先生や学生が何言ってるのか全然わからないことがよくあって、あれらは構造主義の話だったのかということがわかった。

大塚英志『ストーリーメーカー』を読んだ

さまざまな神話をある程度以上抽象化すると同じ構造が大量に出てくる。その構造を創作に応用して物語を作ってみよう!という本。同著者の『キャラクターメーカー』『物語の体操』の続編に位置付けられた本みたい。

2部構成になっていて、前半は物語論の先人が発見・分類した物語の構造を教えてくれる。物語の最も基本的な構造は、「欠落と回復」と「行って帰る」の2点で、あとはそれのバリエーションになる。特に瀬田貞二『幼い子の文学』プロップ『昔話の形態学』、ランク『英雄誕生の神話』、キャンベル『千の顔を持つ英雄』ホグラー『神話の法則』について一章ずつ割かれている。後半は実作編で、30個の課題を順番に解いていくと、前半で紹介したこれらの構造に当てはまった物語が出来上がる。

あとがきでこの本を書いた動機を教えてくれる; 事件を起こす若者はよく小説のようなものを書いているが出来がひどい、「私」の内にある生のままの物語をアウトプットしたから一線を越えて事件を起こしてしまうのではないか、物語を整えて物語る技術があればもっと社会と折り合いをつけることもできたのでは、という問題意識がこの本を書いた動機だと言う。

上記の主張は唐突に出てきて面食らったけど、確かにそういう効果はあると思った。私もこの本の通りになんか物語を作ってみようと思い、ぼんやりと考えていた理想の風景を本の通りに加工してみた。美しいと思っていたものがありがちな陳腐な言葉ではっきりしていくという経験ができて、感情的に結構抵抗があったけど面白かった。自分に物語を作るスキルがないというのもあるけど、しょうもないものしかできなくて、「あ、俺の価値観ってこんなもんなんだ」となることができた。物語作成技術を教えてくれる本という体だけど、実は自己啓発書でもあり、そういう使い方もできる。

読んだきっかけは、大学生の頃に文学好きの友人に「小説ってどうやって書くの?」と聞いたら「大塚英志とか読んだら」と教えてくれたので気になっていた。それでこのあいだ読んだ橋本『物語論 基礎と応用』で本書が紹介されてたので読んだ。著者は『多重人格探偵サイコ』の原作者。中学生の頃にルーシー・モノストーンってマジにいるミュージシャンだと思ってたなーと思い出した。

ぼくのように思いつきで主人公の左目にバーコードを入れてしまうと後で辻褄合わせに苦労します。 (『ストーリーメーカー』188ページ)

笑った。

初版の本だったからか誤字脱字が結構あった。