架神恭介『「バカダークファンタジー」としての聖書入門』を読んだ

旧約聖書新約聖書の各文書のあらすじとキリスト教徒でない著者による解説・感想をまとめた本。

『完全教祖マニュアル』が面白かったので読んだ。著者の砕けた解説がついてても正直よくわからない。このよくわからなさから見ると、信仰にとっては聖書のテキストそのものより伝統や解釈や実践が大事なんだろうなと思った。

「マルコによる福音書」が一番素朴なイエスについての文書であることと、パウロは情熱がものすごくあってキリスト教の礎だけどイエスの復活を重要視するだけでイエスの教えについてはそこまでこだわっていないということがわかった。

Kindle版で読んだんだけど、本文がテキスト化されてなく画像で収録されており、マーカーなど引けず文字も小さいので不便だった。

宮本常一『忘れられた日本人』を読んだ

江戸の終わりから第二次大戦後間もなくにかけての農村部に住んでた人からの聞き書き話を大量に教えてくれる。

女好きの色男で今は橋の下に住む人の女性遍歴(「土佐源氏」)とか、面白そうなことがあると村を出ていってしばらくそこで暮らしてみる人とか(「世間師」)、田植えの時はエロ話をし続けたとか(「女の世間」)が本人が語った体に書かれている。それらの話の民俗学的な評価はほとんどなく読みやすい。

民俗学な価値は私にはわからないけど、いい話を聞いたなーってなる。当時としてはどうでもよいありふれた話だったんだろうけど、こうやって文字に残しておくと貴重で価値のあるものになるんだなと思った。著者には消えてしまうものを形として残しておく使命感があるんだろうなとあとがきを読んで思った。

印象に残った話は以下。

  • 寄り合いのやり方。結論を出そうとするんじゃなく、みんなで集まって気の済むまで周辺情報を共有する。数日かけることもある。そうすると全員の合意が自然と形成されるので後で角が立たない。
  • 著者と祖父の亀の思い出話。著者と祖父が亀を捕まえて飼おうとしたけど、急にかわいそうになって逃がしてやった。その亀は長生きして、著者が帰省するたびにそこにいた。
  • 著者の頼みごとを聞き入れるか否かを話し合いに来た周辺の村落の偉い人たちにお礼を渡そうとしても受け取らず、月夜の海に舟を漕いで帰っていく様子。
  • 歌を歌いながら山道を歩くと迷わない。

読んだきっかけは、『もののけ姫』から網野善彦を読もうとして挫折してそのつながりで宮本常一を知った。それでpha『持たない幸福論』を読んでておすすめ書籍に宮本常一の本が出て来たので読んでみようと思ったんだった。ふたつの理由が重なると読んでみようとなるらしい。

高村友也『自作の小屋で暮らそう Bライフの愉しみ』を読んだ

最低限の生活(=Basicライフ)を送るための実践を教えてくれる。最低限の生活とは、楽にゴロゴロできる生活のこと。誰にも怒られないで寝ていられる土地と小屋を持ち、いかに快適に暮らすか。

「自作」というと身構えるが、素人仕事でそれなりにうまくやれればOKというスタンス(=Babyishライフ)で心地よかった。タイトルになっている小屋の自作に関しては、2x4工法というやり方にあたりをつけてはいるが、設計図を書かずに下(文字通り小屋の下の部分)から順に積み上げていく。多少の誤差は都度調整して作っていく。また食べ物に関して、スーパーで米・味噌・砂糖・醤油・塩は非常に安価に手に入るので、米を炊いて味噌汁をつくってそこに野菜でも入れて食べれば月1万円で最高の食生活が送れるという。

Bライフを送る上での法律についても教えてくれる。土地を買って小屋を作りそこで生活するには、土地の利用に関する法、建築基準法、排水の処理に関する法などが関わってくるが、それらの法を遵守するためにどうしてきたかを教えてくれる。普段の暮らしにこんなに法律が密接に関わっていることを意識していなかったので、社会ってすごいんだなあと思った。

著者の技術に対する不安感が独特だった。プロの建てた家は快適だけど、どんなやり方で家が建てられているのか知らないので、その知らなさに居心地の悪さと不安を覚えるという。自作の小屋では内部の構造も、どこが不格好かも知っているので、そういった不安感がなく開放感があるという。たしかに使い続けた道具には愛着が湧くし、自作したものを改造しつつ使うのは大変な達成感と満足感があるなあと思った。生活の基盤である住みかが自作されていたら、たまらない開放感があるのかもなと思った。

いきなり収入がなくなったらどうしようという不安が常にあるので、こういうオルタナティブな生き方を知れて有意義だった。食事の準備の描写がおいしそうで良い。

ハラリ『サピエンス全史 下』を読んだ

上巻はこっち

資本主義・科学・宗教がヒトの生活をどう変えたか教えてくれる。本書で述べた歴史観の評価と、今後の展望でしめくくられる。

歴史上の出来事の個別事情ではなく、全体としてこういう傾向になったから当然結果はこうなりましたとズバズバ説明していくのが楽しい。一文が短く過去形で言い切る文体で文章が読みやすい。

面白かった点

  • 資本主義は、利益がでたときさらに利益を出せるように投資する。資本主義と科学が合わさると相乗効果でどんどん拡大する。
  • 科学は、投資さえすればガンガン発達して事実上無限の発展をもたらす。
  • このまま科学が発達すると地球史上初めて生物学的な革命が起きる。新たな認知や欲望をもつ全く別の生物を作り出すかもしれない。
  • 上巻に比べると現代の記述がすごく増えた。上巻は評価の全てが相対的だったけど、下巻は現代の価値観によった記述がいくつかあった。
  • スペインやオランダのコンキスタドールによる中南米支配の話が血湧き肉躍って楽しかった。
  • 本書で述べた歴史観の評価をする章では、人類史通しての幸せを定量化して評価できるのか考察する。人は幸せになったのか?不幸せになったのか?アンケートで調査することなどを検討するが、幸せは相対的なものだし、生化学的に定量が決まっているという。
    • 仏教では、幸せを求めると感情が揺れ動いて辛いからそうならないように修行するする。
    • 幸福度はセロトニンの分泌量によって決まり、その上限は生物学的に限られているので、時代を通じてヒトの幸福度は変わらない。また分泌量には個人差があり、セロトニンをよく分泌する脳を持った人はどんな時代でもだいたい幸せだし、そうでない人はだいたい不幸せ。
  • 著者の専門はマクロ歴史学とある。個別の出来事を抽象化して歴史の流れを有り体に説明していくので、概要をつかむのに良いジャンルだと思った。
  • 人間以外の動物に優しくしようという価値観が推されていて、調べてみると著者はヴィーガンらしい。
  • もうちょっと知ってみたいなと思ったのは以下。

松本仁一『カラシニコフ 1』を読んだ

カラシニコフ 1

カラシニコフ 1

国家に期待される仕事は治安を良くすることで、治安は統制された武力がもたらす。武力とは直接的には銃だ。銃の統制に失敗すると、街中に暴力(銃)があふれ、治安は悪くなる。この本では、治安が悪くなった例をソマリアモガディシオ南アフリカヨハネスブルグ、良くなりつつある例をソマリランドにとり、実際に現地を訪れた見聞を教えてくれる。「銃を持つ=暴力を行使できる」ということを様々なエピソードから知ることができる。

カラシニコフ銃(AK-47)がテーマになっている理由は、上記の治安の悪い地域で武力が必要な場面で必ず使われている銃だからだ。なぜこの銃が使われるかというと、故障しづらく出したい時に必ず弾が出るので信頼性が高く、ソ連の崩壊で大量に流出して簡単に入手できるから。

AK-47の開発者カラシニコフのインタビューがついている。子供のときに、友達にもらった壊れた拳銃を一日数十分ずつコツコツ修理したことが技術者を志すきっかけだったことや、もともと兵士として従軍していたけど負傷をきっかけに専門教育をうけてないけど技術者になり、コンペを勝ち抜いてAK47の開発がスタートしたことなど知れて面白かった。

あとがきがよくまとまっていて、本書を読むと学べることがすぐわかるようになっていた。こちらをはじめに持ってくれば良いのにと思った。

読んだきっかけは、最近FPSゲームをよくやっており、自動小銃に興味が出てきたからだった。FPSやるようになるまで拳銃は護身用で、ガチ戦闘には自動小銃が使われるとか全然知らなかった。というか区別がついてなかった。本書を読んで、暴力の担い手としての自動小銃の姿が知れてよかった。

架神恭介, 辰巳一世『完全教祖マニュアル』を読んだ

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

  • 教祖の成立要件は以下の二要素です。つまり、「なにか言う人」「それを信じる人」。そう、たったのふたつだけなのです。(kindle位置 84-86)

  • 教祖は一体何をするものなのでしょうか? この答えは簡単です。教祖は人をハッピーにするお仕事なのです。(kindle位置 104-105)

宗教団体を運営するという視点から、信仰を持つことや宗教的な行いをすることで信者が得ている精神的な利益をくだけた文体で明らかにする。どれも身もふたもない論理で、それだけ説得力がある。知ってる人にとっては当たり前なんだろうけど門外漢にとってはいちいちひっかかるポイントを教えてくれる。「ハッピーになる・する(報酬を得る)」ためになぜそれをするのかということは、すでに知っている人にとっては感覚的に理解されているのでなかなか文章にされない。この本はまさにその部分が書かれている。実際に読むとこんなの当たり前じゃんってなるのだが、それがよかった。文体が独特で、面白くて勉強家の先輩の話を聞いてるみたいな気分になる。

この本のテーマとはあんまり関係ないけど、飯を一緒に食うとコミュニティが強化されることについてもっと知りたくなった。食に関する教義を厳しくすると同じ教団の信者以外と食事するのが難しくなり(食えないものがあるから一緒のレストランには入れなかったりする)、同じコミュニティで飯を食うことが多くなり、コミュニティの結束が強くなるという。たしかに、いまの日常生活でも飯食うことは集まりの基本単位だ。ここら辺のこと書いてある本ないかな。共食っていうらしい。以前この記事を読んで共食って面白そうだなと思ったので、いつか読んでみようと思った。

読んだきっかけは、学生の時に友人の音楽サークルからパンクマニュアルへのリンクが貼られており気になっていたからだった。同作者の聖書についての本も買ってみようと思った。

pha『持たない幸福論』を読んだ

「普通」の価値観に対する別の価値観を教えてくれる。

会社で働いて結婚して子供作って家族で住むのが幸せという生き方は、実はここ数十年の高度経済成長のなかで共有された価値観で、普遍的なものではないし、今の社会の実態にそぐわなくなってきている。とくに生活基盤について、「家族で住む」「一人暮らしする」以外にもシェアハウスとかいろいろやりようがある。人のつながりは物質的にも精神的にも役に立つから、家族と職場以外にいろいろ作っておくと潰しがきく。など。

確かだと思ったけど、実践するのは大変そうだと思った。私はたまたま得たものをほんの少しメンテしつつやっていくことしかできなそう。